[2] 教育研究方針

金沢工業大学 学長大澤 敏

 金沢工業大学は、建学の綱領である「人間形成」、「技術革新」、「産学協同」の基に、人間力豊かで、「自ら考え行動する高度な技術者の育成」を教育目標としています。
 科学技術創造立国として日本が世界をリードし、成長し続けるためには、イノベーションを絶え間なく創造できる人材の育成が求められています。このような社会的な要請に伴い、我が国の理工科系高等教育の主体は既に学士課程教育から大学院教育に移行していることも踏まえつつ、本学では、学部?大学院共に、学生がそれぞれの夢やビジョンを主体的に実現してゆくための多様な教育システムを用意しています。
 金沢工業大学という学びの場において、高い志をもって、自然や人間に対する認識を深め科学的並びに工学的能力や感性を磨くと共に、予測困難な時代に身をもって当たり、各自の創造的挑戦を形あるものにすることで、各学生がきらめくような成長を遂げることを願っています。

「学力×人間力= 総合力」 知識を知恵に変換する教育

 本学の教育は教職員と学生との共同作業であり、教える側と学ぶ側との連携や協同があって、はじめて教育の成果に繋がると考えています。学生の持っている能力や意欲を引き出し、後押ししてゆくことが教育の本質であり「学生が教えられる側から教える側の立場になる仕組み(教え合いの仕組み)」は極めて有効な教育手法になります。この精神は「教学半」(きょうがくなかば)という中国の古典の礼記として学内に掲げられています。これは、人に教える立場にある者は学ぶ者に数倍する力量をもたねばならぬ、との意味です。
 また、科学技術が急速に進展する今日の社会においては、高等教育で得られた各分野の専門的な「学力」は勿論、多様な分野や世代の異なる人達と協力してチームの中で力を発揮できる「人間力」が求められます。授業(正課)では「学力(基礎力と専門力)」、プロジェクト活動等を含む正課外では「人間力(社会で活躍することのできる力)」を高め、総合力(=「学力」×「人間力」)を効果的に身につけて将来の夢やビジョンの実現につなげてほしく思います。「総合力」には「学力」と「人間力」を統合し知識を知恵に変える能力が含まれており、以下に示す学習プロセスを繰り返し行いながら、知識を応用できる能力を身につけていくことを常に念頭において行動してください。

正課や正課外活動における能動的な学習プロセス
 ①基礎知識や専門知識を修得する
 ②知識を基にいろいろな角度から、場合によってはチーム活動として、考え、推論し、創造する
 ③修得した事がらを表現、発表、伝達する
 ④総合的に評価を受ける

アクティブでオープンなキャンパスに

 学生の能動的で主体的な学修の促進と学修意欲の触発を推進するためには、上述した理念や教育目標を踏まえた上で、正課と正課外活動が密接に連動し、学生の学びの場の提供、地域社会や産学連携などにより、学生と社会が共に成長を図るための協同と、これらを支援するキャンパス環境の構築が必要です。本学では、学生が主体的に学ぶための各種教育支援センターや地域?産学共創のプロジェクト活動などを整備しています。学力と共にコミュニケーション力や協働する力、学習への取り組みの姿勢や意欲、社会に出てから必要とされるコラボレーション力や共創?協同の能力を育成するために、「正課×正課外」教育を通じて能動的な学びの場とするアクティブでオープンなキャンパスの構築を目指しています。
 本学が推進する「正課×正課外」教育とは、正課の授業内容と社会との関わりを学生が実感できるようにすることであり、正課で身につけた「学力」「研究力」を社会実装プロジェクト等の正課外で「活用」することで能力や意欲を引き出し、そこから新しい課題を再発見し学生の成長へと導く循環を提供する教育システムのことです。「正課×正課外」教育では、世代の異なる社会人あるいは文化の異なる外国人と共に学ぶ仕組みも含まれています。これらの仕組みの発展形として、学生が企業で4カ月~1年の長期に渡って就労しながら企業と大学で同時に学ぶKITコーオプ教育科目を設けています。社会に開かれたキャンパスで、学生が成長することを期待しています。

大学院でのさらなる成長

 大学院では、自らのより一層の視野の拡大と研鑽に努めることを推奨し、科学技術が急速に進展する今日の社会において、予測困難な時代に果敢に挑戦し、柔軟に対応できるイノベーターの育成に軸足を置いた教育?研究を展開しています。新しい知識や知見を探求し、創造的活動を通して世界に通用する研究者や高度専門技術者に成長してほしく思います。
 博士前期課程(修士課程)では、自分の専門領域における基礎と応用を学ぶと同時に、研究テーマの設定から、研究?開発の手法までを主体的に学び、専門家としてのバックボーンを確かなものにします。その上で、分野の異なる専門家とコラボレーションできる能力を身につけます。社会との接点を強く持ちながら、国際社会においても活躍できるプロフェッショナルとしての倫理観の育成や行動設計の明確化などを図ります。
 博士後期課程においては、自立して研究活動ができることに加え、高度な専門領域において世界で活躍できる技術者?研究者を目指します。国内外の研究開発や産業界のニーズを的確に捉えるための視野を持ち、海外の大学や企業の研究者と協働できる能力や国際会議等におけるディベート力を育成します。

期待 学生時代を実り多いものに

 学生の主体的な学びが実現できる学修環境空間(ワークスペース)、教育支援センター、アクティブ?ラーニングや「正課×正課外」活動を実践するための学生ステーション、ライブラリーセンター、イノベーション&デザインスタジオ、夢考房などの教育設備やシステム、プロジェクトなどを積極的に活用して、学生生活を実り多いものにしてください。皆さんが創造力豊かな技術者になるための基礎および専門知識とその活用プロセスを自ら学び、それを応用して高度技術化社会で大いに活躍されることを切に望みます。